あなたの小説はなぜラストまで書けないのか。あるいは読まれないのか。

文章が読みにくい、冒頭しか読まれない、最後まで書けない、という初心者が陥りがちな悩みを少しだけアドバイスします。

どんな文章だと途中で読むのを止めるのか?

先日、カクヨムで好みの作品をいくつか見つけたのですが、面白そうなのに文章があまりにも読みづらくて、読むのをやめた作品がいくつもあります。
当ブログの指南編にあるように、素人が書いた文章は読みやすいものより、読みづらい、分かりにくいほうが圧倒的に多いです。それでもまだ読めるレベルならいいんですけど、読んでも読んでも内容が頭に入らないという、不思議な文章があります。
ぱっと見ると、地の文がそこそこあって会話とのバランスがよさそう。ライト系とはまた違うんだけど、一般向けの商業小説のように読みやすくない、というタイプ。

なぜ???

……というのは、昔からあったので、自分なりに考察した内容をメモしておきます。
冒頭から2.3話は読まれるのに、ラストまでほとんどたどり着かない、というパターンの作品が当てはまるでしょう。
あくまでも私の場合なので、好みが違えばまた読みやすい文章の定義は異なると思います。一応、参考にまで。

 

・描写がほとんどない。あっても、人物描写ぐらい。あとは説明文ばかり。

……一番、多いパターンです。会話もあるけど、その会話と会話の間の文章がほとんど説明文。発言主たちの表情は少しあっても、仕草や心理描写、情景がないものだから、どんなシーンを今、自分は読んでいるのか、という想像が働かないです。
脳内に映像が浮かんでこないんですよね。その説明をさらに噛み砕いて描写で読ませて欲しいです。
ぱっと見、文章は達者で、ラノベ以外の本もたくさん読まれているんでしょうけど、語彙力あっても、描写で読ませてくれないと、読み手はストレスがたまります。
説明文は書くのラクなんですよね、書き手にしてみたら。気持ち分かります。でもそこで書き手が手を抜いたら、読み手に負担がかかります。
とくに歴史物やSFは世界観を始めに提示する必要がありますから、どうしても冒頭が説明くさくなるのは仕方ないとしても、ずっと説明文だと読みづらい! そしてサヨナラ……。

 

・一文が長すぎる。一文に2つ以上のシーンを入れるのは無謀。

……描写があるのに、読みやすいはずなのに、なぜか頭に入らないのがこれ。とにかく、一文が長い、くどい、句点すらない!
人間が認識しやすい文章の長さは、およそ40文字までです。それ以上になると、単調にならないように、一文のなかにメリハリをつける必要があります。

例:娼婦であるアリスは盗賊から逃れようと必死にもがいて助けを求めるが、ポーチの中に昨夜の客から金がない代わりにもらったナイフがあったのを思い出すと取り出して突き刺した。盗賊の男は絶叫すると腹から真っ赤な鮮血を吹き出してアリスの頬を生ぬるく染めたときに、隙ができたのを狙って恨みを晴らすようにナイフをぐりぐりと深く突き刺してやった。

例文でも長いですが、さらに長い文章もありました。長いあまり、主語がねじれてしまいます。これが説明文だったら、ねじれはないけど、描写はだれの視点なのかが必要なので、一文のなかでカメラワークをずらされてしまうと、読み手は混乱します。
……そしてサヨナラ。

 

・会話が説明くさい。不自然。あるいはなさすぎ、そして登場人物が脳裏に浮かばない。

……要するに、会話がラノベ口調っていうタイプ。描写としての文章を省く代わりに、キャラクターのセリフで状況を説明するのです。
まあ、ラノベ風にしたいから、地の文を減らして、セリフを説明口調にするっていうのなら、まだわかります。ぱっと見でわかるから、即バックすればいいしw
読むかどうか迷うのは、地の文はきちんとしているのに、会話だけ二次元キャラになる作品です。
歴史モノなのに、いきなりカタカナ連発、ひどいのになると★や♥付き。戦国武将が初陣後の勝利で、
「俺ってやるじゃん!最高!もしかして槍の名手?さすが○○家当主してる父上の息子だけあるぜ。あはは★」
みたいな決め台詞を披露されたら、もったいないなーと思います。そこだけいきなり、21世紀へタイムスリップだもん。しかも説明口調。白ける……。
あと、会話があっても、だれが言ったのかさっぱり不明なのも読みづらいです。せめて○○が言った、ぐらいは欲しい。上手い文章だったらなくても、口調や立場、視点主人公の心理描写で自然に想像できるんですが、どの登場人物も似たような口調で、性格や思想の描写がないものだから、判別しづらいんですよね。これも描写不足が招く弊害といったらいいでしょうか。
あと、硬派な作風を書いている作品に多いのですが、とにかくセリフがないのも読みづらいです。説明文、ときどき描写、たまに堅い口調の不自然な会話。小説は登場人物がどう生きているのかを読めるのが醍醐味だと思うので、語彙力あるのにもったいないな、といつも思います。