あなたの小説はなぜラストまで書けないのか。あるいは読まれないのか。

文章が読みにくい、冒頭しか読まれない、最後まで書けない、という初心者が陥りがちな悩みを少しだけアドバイスします。

完結しない物語たち。

・その1

ラストが見えない。その気配すらない。

 

初心者が書いている作品に一番、ありがちなパターン。とくに長編ファンタジーで見受けられます。

 

冒頭での説明はなく、颯爽と登場した主人公勇者。

彼は魔法使いの陰謀に巻き込まれてしまい、悪の化身と戦います。聖女から託された剣を一振り! 見事、悪い使い魔を退治します。

しかし魔法使いはコウモリに変身。闇の夜に消えてしまいます。

 

それから魔法使いを倒すために騎士団へ入る主人公は、そこで聖騎士の妹と仲良くなります。恋した勇者は魔法使いを倒したら、必ず戻ってくると約束をするのですが、討伐隊は新たな魔法使いの登場で行く手を阻まれ……。

 

そんなストーリーが延々と続きます。戻ってくると約束したはずの少女のことを忘れたかのように、騎士団を出た勇者は賞金稼ぎの少年とともに砂漠の旅へ。

それから少年が盗賊団にさらわれてしまい、友達を救うため謎の美女商人と一味のアジトへ侵入します。

 

それからまだまだ話が続き、今度は機械仕掛の魔法使いが登場して、さらに敵が増えたのはいいけど、騎士団でのごたごたはなかったかのように、隣国の騎士団と行動。今度は機械博士と戦うことになりそうだ。

 

結局、この辺りで作者は力尽き、更新されないまま放置される作品…………。

 

果てしない物語はラストがありません。

なぜこうなったのか?

書き始める前に、しっかり「自分はどんな物語を書きたいのか」を考えなかったのが原因だと思われます。

とりあえず始めに、きちんとラストがどうなるのかを考え、そのラストへ向かうためにどう主人公たちが行動するのかを、しっかり想像しましょう。

自然と、冒頭をどうすればいいのか、そして必要なエピソードはどれなのかを取捨選択できると思います。



・その2

無駄なシーンが満載。

 

冒頭で説明が延々と続いたら、次は長々と主人公の説明。それが終わってようやく話が始まるかと思ったら、朝、目覚めるシーンから始まる。

母親登場。「おはよう、太郎ちゃん」と主人公を起こします。

食堂へ行ったら新聞を読んでいる父親が、「太郎は今日で16歳になったな。そろそろ冒険をしようか」と言います。

その前に腹ごしらえをと、太郎は母親が焼いたトーストとベーコンエッグ、コーンポタージュを食べるのでした。

 

これもありがちなのですが、本筋とは関係のないシーンが続くのも読んでいて苦痛になります。

よくあるたとえとして、朝主人公が目覚めたら朝食をとって、学校へ行って……というパターン。のちのち伏線になればいいのですが、あってもなくてもいいシーンだったら、思いきって削除しましょう。

もったいないからといって、大事にとっておいても読み手にしてみれば価値がないです。冷たいようですが、邪魔なだけ。

情を入れず、冷静に修正するのも、脱初心者への道です。



・その3

何の話かさっぱり不明。ジャンル違い?

 

連載が長く続く商業作品(マンガと小説)でもたまに見かけるのですが、話が脇道にそれてしまい、一体何の話か不明な作品のこと。

 

冒頭、少女義賊の主人公が何者かに追われて、ある組織にかくまってもらうのですが、なぜ追われていたのかを描写しないまま、話が進む。

しかし進んでいるはずの話は、美形男爵の登場により、一気にラブな方向へ。緊迫感のあった当初とは変わり、今度はひたすら恋愛モードのシーンばかりが続きます。

やがてライバルの婚約者が登場するも、男爵は政略結婚だからしたくない。主人公を選ぶと言ったものだから、さあ大変。主人公は婚約者の両親に慰謝料を請求されてしまいます。

その慰謝料を払ってくれるはずの男爵は逃亡。貧乏だったよう。代わりにイケメン弁護士が主人公の窮地を救ったのですが……。

 

あれ?

追われている理由がない。

おまけにどんどん新しいキャラが登場して、冒険ミステリーのはずのジャンルが違うものに変わっているぞ。

読んでも読んでも、新たな恋とライバルや敵が登場するばかりで、どのへんがミステリー? と首をかしげることに……。

果てしない物語と共通するのですが、このパターンはラストを考えてはいるものの、途中から出てきたキャラが好きになってしまい、予定外の活躍をさせるタイプです。

たしかにキャラもいいし、ストーリーも進むんだけど、肝心のテーマがさっぱり不明。何の話を読んでいるのか分からなくなってしまい、脱落してしまいます。

 

解決方法はこれもやはり、書く前にきちんとあらすじを考えていないのが原因。

予定外のキャラが登場したら、(心を鬼にして)必要なシーンだけ登場させ、あとは番外編として書くほうがベターです。

 

私はしないのですが、冒頭を削って新たなお話に作り直す書き手もいるそうです。そうすればジャンルも変更できるし、不自然な初めごろのシーンもなくなるし、いいアイデアですね。

問題は書いてすぐアップしている場合、読者を混乱させてしまうことでしょうか。ネット小説ならいいですが、キンドル等の自費出版の場合、修正作業は慎重にしましょう。期待してた話とちがうじゃないかと、購読者からクレームが来る可能性があります。

 

例のように男女向け問わず、バトルと恋愛ものがからむ作品に多い印象。